驚いて、納得したこと

先週ツィッターを見ていて驚いたことがありました。東京工業大学で美学を講じておられる伊藤亜紗さんと言う方が、ご自分のゼミで学生たちと一緒に愛をテーマとして話し合い、エーリッヒ・フロムという人の「愛するということ(原題はThe Art of Loving で、日本語では『愛の技術』という副題を付して原意が分かるように配慮されています)を取り上げるとのこと。この本は私が20才前後の頃に、つまり40年以上前、いや50年近く前に話題になり、私も読みました。当時は恋愛結婚至上主義の風潮でしたが、その流れに竿をさすように著者は米国人であるにもかかわらず、見合結婚の勧めをされていました。その意味するところは、いっときの恋愛感情で結婚というゴールに至るのではなく、結婚は他者であるお互いの間柄に愛を育んでいくスタートであって、芸術家が芸術作品Artを丹念に作り上げるように、愛を育み、作り上げる技術を必要とする、と問いかけるのでした。
40年以上前に話題になった書物ですから「えっ!なぜ今?と驚かされたのです。著者の伊藤亜紗さんは美学を専門とする方ですが、身体論に結んで興味深い著作を著しておられます。「どもる体」は吃音と体について論じていました。今私が読んでいるのは「目の見えない人は世界をどう見ているか」です。視覚障害と体、つまり、目の見えない人が世界をどのように認識し、どのように関わって(見て)おられるのかを研究考察しています。読みやすく興味深い本です。美学というのは言葉にしにくいもの(代表的なものは美や芸術でしょう)を言葉にしようとする学問のようですが、目の見えない人を違う身体を持った人、すなわち自分はいつも自分にとっての当たり前を前提にして理解しようとして、その結果誤解し無理解でいてしまう他者、と表現しておられますが、その他者へと向かう目線と、理解しようとする取り組み、その姿勢、著者は愛が不可欠と感じておられるのでしょう。きっと。
愛は自分にとっての当たり前を排して、あるがままの他者へ近づく道であり、人と人と、つまり他者との交わりを作り上げていくものなのですね。Artとしての愛、なるほどと納得しました。